2026年5月15日〜17日、新潟県阿賀町の伝統のクマ猟師、江花一実さんに学ぶ旅に参加しました。
40年のマタギ*生活で99頭の命をいただいた**江花さんは、ご自分の経験や知識という説明し難いことを言語化する達人でもあります。
*この地域では、「マタギ」ではなく「くまぶち(くま撃ち)」と呼ぶそうです。
**江花さんは決して「撃つ」「殺す」という言葉を使いません。「山の恵みをいただく」と考えています。

何年も会いたかったこの人は、意外な方法で登場。どんな登場だったかは、秘密です。笑
1日目は、阿賀野川の産業史を伺います。決して趣旨に関係ないわけではなく、自然と人間の関係性や、産業に振り回された地域の成り立ちを理解するのに、重要な要素でした。


山の上の開けた場所に木が一本。昔の鉱山労働社の人々にとってここがどんな意味を持っていたか、思いを馳せます。
合祀塚?を見ると、銅山に集まってきた人の出身地や関係性まで読み解くことができます。


川の達人の五十嵐洋祐さんが外来種ウチダザリガニをとって、生きたまま「しめる」方法を教えてくれました。命をいただくありがたさと責任を体験する時間でした。
木の枝を加工・利用する方法を教えていただきます。


チームに分かれてマタギ流の火おこしを習い、飯盒で阿賀町の美味しいお米を炊きます。
熊肉を切り分ける江花さん。腕のいい人が撃ち、解体した熊肉は美味しいそうです。全く臭みのない、美味しい貴重なお肉を、木の枝に刺して焚き火で焼いて塩だけでいただきました。
名人江花さんは、「私のクマは、美味しい」と。笑


佐藤千裕さんが用意してくれる、安全で美しいお料理。シェフの千裕さんは東京から新潟に移住し、自然と共生できるお料理を提供しています。
阿賀流漕術師範でもある江花さんが伝統的和船の漕ぎ方を伝授してくださいました。以前は生活の一部として100艘ほどあった和船は、今ではこの1艘のみとなったそうです。


和船に全員の半分ずつ乗っている間に、五十嵐さんが川の説明をしてくれます。五十嵐さんは、「江花さんを”師匠”と呼んでいるが、山の師匠ではなく、”人格の師匠”。僕は山には行きたくなくて、ずっと釣りをしていたい」と笑います。
年季の入った江花さんの刃物。この刃物が、どれくらい役に立ったことでしょう。


ナイフで土壌を切り出して、「今年の落ち葉、去年の落ち葉、ここから土」と見せてくれます。土壌が保水する仕組みと、小雨と森林火災の関係もわかります。
私の中では、これぞマタギ!の尻あて。タヌキの毛皮だそうです。


クマの爪痕もあちこちにありますが、これは樹皮を剥いて形成層という甘い組織をかじり取った跡。甘いものが好きなんですね。以前、皮剥き間伐体験でなめてみましたが、樹皮の下の水は甘かったです。
旅の趣旨に合うよう「気配を感じる」アクティビティを選んで、チームビルディングを担当させていただきました。


クマの毛皮と。
最後にお宅に伺って、奥様特製のクマ汁をいただきました。味付けは家庭によってちょっとずつ異なるそうです。

3日間の旅で得た・学んだことは、計り知れない量と深さでした。まだ消化しきれないくらいのですが、忘れないうちに書き留めておきます。
ファシリテーターとしての私は「コンテンツ」よりも「プロセス」、そして「あり方」に興味を抱くことが多く、知識や情報もさることながら、「その背後にあるもの」に惹かれて旅に参加しました。「江花さんの”あり方”と身体性を盗みたい」と思う一方で、長年かかって身につけられたものを一朝一夕に体得できることは、到底無理だとわかっていました。
そういう時には、どうするか?
ダライラマ法王、映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』出演のレッド・クロウさん、その他多くの素晴らしい方にお会いする機会に恵まれた時に、「何か(頭で理解できること)を得る」のではなく、「焚き火にあたるように、その方の氣にあたる」ことを試みてきました。
顕在意識では何を学習したたのかわかりませんが、潜在意識レベルでは「感染・伝染するように」「ただ近く・同じ空間にいて」身体には確かに何かが「浸透」すると考えてきました。暗黙知・身体知と呼ばれるものです
江花さんと共に、阿賀野の山々や川の気配も、私の中に「浸透」してきたことを願っています。
抽象的な話になったので、いくつか印象的だった感想を。
・静かな人だと思っていましたが(だからと言ってけしてうるさい人でもありませんが)、お話がうまく、お茶目な人でした。実は自分の中では、面白さやお茶目さは大事なので、ますます素晴らしいと思いました。(どうお茶目だったかは、会った時のお楽しみに♪)
・自然に対する深い愛情と尊敬・・・というよりむしろ自分はその一部として捉えておられると感じました。
・町のあちこちで、いろいろな人に声をかけ、かけられ、地域の人との強いつながりを感じました。公務員として長年町のために尽力されてきたので当たり前とも言えますが、自然だけでなく、それに包まれて現代に生きる人々も含め、全体の調和を模索し実現されているようでした。
・「私は名人なので、私のクマは美味しい」「私は”くまぶち”のエリート教育を受けてきた」等々、他の人が言えば自慢話になることを、さらりとユーモラスに言うので全く自慢話に聞こえない絶妙な語り口。
・「私は、あの、向こうに見える山の上まで、30分で行けます」という言葉に「どうやって?」と尋ねると、「まっすぐ行くから」という答え。常々、「マタギに最重要なことの一つは、高速移動」と話されていますが、最後にクマの命をいただく人(なんという呼び方か、忘れました)は特に、誰よりも早くそこに到達しないといけないそうです。
・一番印象に残っているシーンは、山道を歩いている時のこと。右にそそり立った斜面を私が指差して、「こんなとこ登っちゃうんですか?」と聞いた瞬間、江花さんは斜面の上まで一瞬で登り、登った時より速い速さで「落ちてきて」、再び私たちの前に立っていました。「こんな私は64歳です。昔ほどはできなくなったけどね」 唖然とする私たちの前を、江花さんはまた何事もなかったかのようにさっさと歩いて行きます。「人間の身体能力は、鍛えれば上がる。こんなことは、誰にでもできる」・・・さらに唖然です。
・旅の前のオンライン講座で、「先輩たちに、クマの胸に銃身の先が当たる距離で撃てと言われてきた」 とんでもない近さに驚いた私は思わず、「その瞬間は、どんな感情がありますか?」と尋ねました。「感情・・・特に何もありません」「いやいや、恐れとか、興奮とか、美味しそうとか(笑)、なんかあるでしょう?」「ないんです」 江花さんはそれを「ゾーン」と呼んでいるようです。(間違っていたら訂正をお願いします) 私は長年、レベル感は異なるものの、それを「静かな場所」と呼んで探求してきました。
身体知・暗黙知は、属人性の高いものです。そこにどう再現性をもたらし手渡すかが難しいところ。それを江花さんは長年体現されてきたとのことです。「スイッチ」のようなものがあるのでしょうか。
語り尽くせず書き尽くせませんが、旅から一週間後の時点のレポートは以上となります。



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