私は長年、ドラムサークルという非言語のワークショップに関わってきました。打楽器の即興演奏であるドラムサークルは、一見遊んでいるような、ムダなことをしているように思えますが、言葉を使わないのでむしろ、本音が出たり関係性が如実に浮き上がってきたりする、興味深い活動です。
(ドラムサークルについてはこちらをご覧ください。)
ドラムサークルを始めた2004年頃、参加者全員にアンケートを書いていただいていました。
あるフェスティバルで、自由参加型のドラムサークルを開催したときのことです。少し離れた場所に、一人の中年男性が立っていました。腕を組み、しかめ面をしています。その表情からは、「俺はあんな子どもの遊びみたいなものには参加しないぞ」という雰囲気が漂っていました。
当時の私は、その方を見て「きっと興味がないのだろうな」と思っていました。
ところが、終了後に回収したアンケートを見て驚きました。
そこには、「すごく楽しかったです♪」と、まるで別人が書いたかのようなキラキラした感想が記されていたのです。もはや「ピンクのハート♡」が飛び交っているようにすら感じられました。(笑)
私はその瞬間、自分がいかに表面的な情報だけで相手を判断していたかに気づかされました。
これは組織づくりや人材育成にも通じる話だと思います。
ブレインマークスの安東さんは、「経営者がビジョンを熱く語っても、伝わっていないと感じる」という点について、「同じことを伝えても反応は人それぞれ」と語っています。こちらが熱意を込めて話しても、うなずく人もいれば無表情な人もいます。否定的に見える反応をする人もいるでしょう。
しかし、その反応だけを見て「伝わっていない」「やる気がない」と決めつけてしまうのは早計です。
また安東さんは、「腹落ちは現場の実感から生まれる」とも言います。人は言葉を聞いたその場で理解するわけではありません。後になって体験と結びついたときに初めて、本当の意味で納得することがあります。
私が見た腕組みの男性も、外から見れば冷めているように見えました。しかし内面では、しっかりと体験を味わい、楽しんでいたのでしょう。
私たちはつい、表情や態度、第一印象から相手を判断してしまいます。しかし人の心の中は、外から見えるものよりずっと豊かで複雑です。だからこそ、目の前の反応だけで結論を出さず、相手を信じて伝え続けることが大切なのだと思います。
人は見た目ではわからない。
ドラムサークルの現場で学んだこの教訓は、今も私の人との向き合い方の土台になっています。
*安東さんのyoutube



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