「なぜ、キャンプで寝ている人間を、野生動物は襲わないのか?」という動画を見ました。襲わない理由の一つとして、「おかしな匂いがする=未知の生き物」だと動物が警戒する、という説明がありました。
そして、「匂い」で思い出しました。
INTEGでは、Being SOLOという、自然の中で「一人でいる」ワークショップを行っています。その中の出来事です。
ワークショップ中は、参加者にスマホやPC、本などの使用を禁止していました。ところが私は、家に残してきた老犬の様子が気になり、ドッグシッターをしてくれていた友人とMessengerでやりとりしていました。(参加者には秘密です。笑)
その友人は自然に詳しく、特に鳥の専門家です。
「フクロウの声がします」
「ホー、が二回ですか? 三回ですか?」
「二回です」
「では、アオバズクです。声が聴けるなんて、羨ましい!」
という、他愛のない会話をしていました。
しばらくすると、
「あ!!! テントの外に、何かいるようです」
「シカやうさぎならいいですが、イノシシや熊なら、大変……」
その場所は、イノシシや熊がいないことを慎重に確認して選んだところです。
それなのに……
クンクン……。
おかしな匂いがする。
それまで、そんなことは全く気にしていませんでした。ところが、ある瞬間から、匂いがものすごくよくわかる。まるで、嗅覚のスイッチが突然入って、数十倍になったようでした。
キャンプでは、トイレをした後のペーパーをビニール袋に入れて、テントの下に置いていました。普段はもちろん、ほとんど匂いません。さらに、元来私はあまり鼻がいい方ではありません。
ところが、そのときは猛烈にニオイを感じるようになった。
そして私は、外に動物がいないことを確認すると、テントから出て、咄嗟にその袋をテントの下から取り出して、横にあった木の枝にぶら下げて、また逃げるようにテントに戻りました。
「ここは私のところだから、来ないで」とでも言うように。
面白いのは、これは私が頭で考えてやったことではないのです。
身体が勝手にやった。
そんな感じでした。
普段から、「人間も動物の一種」と考えています。
でも、自然の中で一人になったとき、思わぬところで、自分の中にある「生き物としての能力」が顔を出した。もしかすると、人間の能力とは、普段は「ない」のではなく、眠っているだけなのかもしれません。
私たちは普段、目で見て、耳で聞いて、頭で考えて、言葉にして判断しています。
でも、自然の中に一人でいると、何かをきっかけに、
カチッ。・・・とスイッチが入る。
魚のいる場所がわかる。
貝が見つかる。
鳥の気配がわかる。
危険を感じる。
身体が先に動く。
そういう能力は、私たちの中に最初から備わっていて、経験や環境によって目を覚ますものもあるのではないでしょうか。
暗黙知について考えていると、つい「知識をどう身につけるか」という話になりがちです。
でも、もしかすると、
「すでに自分の中にあるものを、どうやって目覚めさせるか」
という側面もあるのかもしれません。
そして、それにしても――
あのとき私の中で入ったスイッチは、いったい何だったのでしょう。
「ここは私のところだから、来ないで」
と体が反応した自分を思い出すと、ちょっと笑ってしまいます。
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