近年、多くの企業が若手社員の「びっくり離職」に頭を悩ませています。採用にコストをかけても、定着につながらない。特に、Z世代と呼ばれる若い世代の価値観は、これまでの世代と大きく異なり、従来のマネジメントではその本質をつかみきれない場面が増えてきました。
昔から「今までの若い者は・・・」という表現はよく使われてきました。ですが、Z世代が現在私たちと異なる価値観を持っていることには、「ジェネレーションギャップ」という言葉だけでは説明できない、さまざまな環境要素が関わっていると感じます。
・経済・社会:ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代とは全く異なる日本の経済状態。グローバル化による複雑さと予測不可能性、国内外の社会に広がる不安。
・デジタルネイティブ:いつでも連絡・発信ができ、一方的な情報発信も可能。匿名文化も日々増加。
・情報過多:さまざまなレベル感の情報が簡単に入手できて、「経験」の重要性に実感が伴わない。
この数年、社会学者 宮台真司先生の「(若者にとって)仲間以外は、みな風景」という言葉をあらゆる角度から考えてきました。
若者と接していて感じるのは、「関わり合いを避ける傾向」が強まっていることです。トラブルを避け、無用な摩擦を起こさないよう距離を取る。しかし同時に、他者からの関心を強く求めている姿も見え隠れします。
ある企業で、入社2年目の社員がこう漏らしていました。「仕事について相談したくても、上司が忙しそうで声をかけていいのか分からない。気にかけてもらえていない気がすると、“自分はここに必要とされていないのかな”と感じてしまうんです。」この社員には直属の上司が「今日の調子はどう? 困ったことがあったらいつでも言ってね」という一言を伝えただけで、仕事への前向きさが戻っていきました。
“関心を向けられる”という極めてシンプルな行為が、これほど人を安心させるのかと驚かされるエピソードでした。
マザー・テレサは(諸説あり)「愛の反対は憎しみではなく、無関心」という言葉を残しましたが、無関心は人を最も深く傷つけ、孤独にします。そして職場や社会においても同じ構造が存在しています。
組織開発では「関係性」と「パーパス」を大切にしていますが、私はその前段にある「関心」こそ、「関係性」以前にもっと意識されるべきだと考えています。
関係性は、相手への関心があって初めて築かれるものです。「あなたに興味があります」「あなたの考えを知りたい」と伝えることが、心理的安全性の土台になります。逆に、関心がなければ、どれだけ制度を整えても対話の場を設置しても、形だけの組織開発で終わってしまいます。
若手の離職が増える背景には、仕事内容や待遇の問題だけでなく、「自分を見てもらえていない」「大事にされていない」という感覚が潜んでいるのではないでしょうか。人は関心を向けられると、自分の存在価値を実感し、働く意味を見いだします。これは世代を問わず普遍的な心理です。
だからこそ、企業がすべきは難しい理論を学ぶことではなく、まず「関心を寄せる」という最も人間的な行為を、組織の文化として根づかせることだと思います。それこそが、若い世代の働きがいを高め、組織の活力を取り戻す第一歩になるのではないでしょうか。



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